「苦手だったから仕方ない、でも中学入試を突破したから大丈夫だよね」と考える人もいるでしょうが、仕方ないでは済まされないぐらい大きな問題が潜んでいます。 中 1 の数学は、小 5・小 6 の算数の延長線上、あるいは場合によっては算数そのままの内容です。たとえば算数では比例・反比例を学習しますが、内容は中 1 の比例・反比例とほとんど変わりません。
中学では文字を使って抽象的に表し、負の数まで扱いますが、それ以外に大きな違いはありません。小学校でグラフも書きますし、文章題にも取り組みます。
ゆえに、「中 1 数学で学習する比例・反比例が苦手」とか、「定期考査で比例・反比例が出たけど、50 点も取れなかった」とかいうことは、ただ単に中学校の勉強をサボっただけでなく、小学校の算数も穴だらけであることを意味しています。算数と中 1 数学の深いつながりは決して比例・反比例だけでなく、文字を使った式も、平面図形・空間図形も、資料の活用にもみられます。
中 1 で学習することの大半はすでに小学校で学習しており、新しく学ぶことは意外に少ないのです。にもかかわらず、中 1 の数学で 70点も取れない、全然理解できていない私立中生が多いのは、小学校の勉強を完全に身につけていないことを意味します。
中1 数学ができないというのは、中学に入って、部活に精を出しすぎたせいで数学ができなくなった、という単純な話ではなく、算数の段階で破綻していたという根深い問題なのです。反対に、算数を正しく身につけている子にとっては、中 1 の数学はそれほど難しくありません。やっていることは小学校時代と変わりませんし、生徒によっては方程式をつかえなかった小学校時代よりも、簡単に解を求めることができる数学の方が簡単だと思えるようになります。
中1で塾に通って、定期考査で 90 点以上取っている子であっても、まだまだ穴が多く、力は不十分なのケースも多いのですから、最初の段階で数学に苦手意識が出てしまうと、どこかで本気になって取り返しておかないと(これがなかなか難しいのは言うまでもありません)、どんどん追い詰められて、将来の選択肢を減らしていくことになります。
子ども本人は多くの選択肢があることの重要性をそれほど理解していませんが、まわりの大人は将来の選択の幅が広がることの意味を分かっているはずです。中学校までの勉強は、子ども本人がどう思うかということよりも、親が子の将来のために、このままでいいのかを考え、ときには干渉し(過干渉はよくありませんが)、必要な手立てを与えてあげられるかにかかっています。近年の大学入試において、難関国公立大学・一部私大の合格が難しくなっています。
少子化により、大学に入りやすいというのは勘違いで、むしろ人気の大学の競争はこれまで以上に大きくなっているのです。それを知っている大人が、子どもの勉強に対して必要な干渉していかなければ、気づいたときには子どもたちの選択肢が減っていることにもなりかねません。
「中学受験を突破したから大丈夫!」ではなく、基本計算は大丈夫なのか、文字を使った式をつくれるか、割合はテクニックではなく本質を理解しているのか、関数はどうか、図形はどうか、場合の数は、単位変換は、資料を読み取れるか…。このような穴を塞いでおくことが、数学での脱落を防ぎ、得意科目にするために必要なのです。